学習概要
中小企業での経理実務基礎
前提知識:簿記3級、 cresta522.hateblo.jp
対象:経理に興味のある方、担当者
経理の仕事
経理部に必要な知識
会計知識
IT・英語(場合によって)
体力(決算時期は残業)
経理部の種類
業務委託:会計事務所に経理業務を委託する。中小企業向け。
親会社・子会社経理:親会社の事を連結経理と呼ぶ。連結会計(簿記2級)。グループ会社としての経理を管理する。大企業向け。
経理部の仕事
中小はバックヤード全般を経理が行い、忙しい。
仕事分類
日次業務
現金・預金の管理
経費精算
領収書等管理
請求書・領収書の作成
伝票入力
勤怠管理・有給休暇管理
月次業務
給与計算・残業代計算
社会保険料等の徴収・納付
所得税・住民税の徴収・納付
売掛金・買掛金の管理
月次決算
年次業務
社会保険料・労働保険料の更新
年末調整
償却資産税の申告
固定資産
年次決算
税務申告・中間納付
株主総会
都度業務
賞与の支払い
従業員の採用、退職手続き
税務調査
経理の年間スケジュール(例:3月決算会社)
繁忙期:4,5,7,12,1月
4月
年次決算
5月
6月
住民税の納付(納期特例 12~5月分)
7月
所得税の納付(納期特例 1~6月分)
社会保険料算定基礎届の提出
労働保険料の年度更新
#### 11月
法人税等の中間申告・納付
12月
住民税の納付(納期特例 6~11月分)
年末調整
1月
所得税の納付(7~12月分)
法定調書の提出
償却資産税の提出
3月
実地棚卸:商品を持つ会社は、倉庫にある商品の棚卸し
日次業務 - 現金・預金管理
- 現金の保管(金庫)
- 金庫からの現金の出入りを記録・把握
- 現金の残高確認
- 会計システムとの整合性チェック
- 金庫への補充・引き出し
現金の保管
鍵付きの金庫に保管し、常時施錠する(推奨:耐火金庫)
金庫から現金を出し入れできる人は特定の人のみ(推奨:2人)
大手だとそもそも現金を置かない
他人振出の小切手なども会計上の「現金」
会計上の現金の種類
金庫からの現金の出入りを記録・把握
金庫から現金を出したい場合は金額と用途を確認。
必ず領収書を回収
現金出納帳と会計システムへの入力
現金の残高確認・会計システムとの整合性チェック
その日の終わりに。
- 現金を数える
- 実際の現金有高と現金出納帳の残高を照合する
- 現金出納帳の残高と会計システムの現金残高を照合する
現金の残高確認(金種表)
https://www.asahipress.com/kaikei/pdf/08.pdf
差額があれば、現金のずれた理由を突き止める
当日中にわからなければ、「現金過不足勘定」を使用して、金種表に金額を合わせる。
翌日に原因が判明した場合:切手2,000円購入したのが現金出納帳に記載漏れしていた
「現金過不足勘定」を打ち消す。
決算まで原因が不明な場合、「雑損失」という費用勘定をあげて、「現金過不足勘定」を打ち消す。
雑損失が多いと何かしらおかしい、、、
現金の出入りが少ない場合は、数日に一度金種表で数える
小売業や、飲食業でレジがある場合は毎日が良い
現金を数える担当者と現金出納帳作成者(会計システム入力者は別が良い)
金庫への補充・引き出し
現金の管理
会社に多額の現金は置いておかないほうが良い。(横領リスク。社内規定で社内には10万円まで、などと決めるのが良い)
預金の管理
- 預金の種類
- 通帳と銀行員の保管
- 預金の残高確認
- 会計システムの整合性チェック
預金の種類
預金の種類 | 用途 | 金利 |
---|---|---|
1.普通預金 | 運転資金として、自由に預け入れ、払い戻しができる預金 | 低 |
2.当座預金 | 小切手や手形の支払に使用する預金 | - |
3.定期預金 | 資産運用の口座として利用され、満期日まで払い戻しができない預金 | 高 |
4.定期積金 | 納税や賞与支払のために毎月定額を積み立てる預金 | 高 |
通帳と銀行員の保管
通帳は鍵のかかる金庫などに保管。
※ 繰越記帳した古い通帳も保存する必要あり(7年):会社法で定められている
銀行員は別の場所で管理
預金の残高確認の方法
普通預金:定期的に通帳記入する
当座預金:通帳はないので当座勘定照合表
定期預金:利息の計算表
会計システムの整合性チェック
会計システムの預金残高と実際の預金残高の一致を確認する
当座預金は預金通帳もない、小切手などの出入れが激しいと、記帳のズレが発生する。
会計ソフトと実際の預金残高が一致しなかった場合、「銀行勘定調整表」を作成し、両者の残高が一緒になるように調整する。
この照らし合わせは月一が通例。
日次業務 - 経費精算、領収書管理
経費精算
経費精算:従業員が会社の事業活動のために使用した経費を会社に報告し、金銭を従業員に払い戻すこと
経費精算の種類
立替精算
従業員が自らの負担で会社の経費で立替払いし、後日会社から立替分の金銭を従業員へ払い戻す生産方法。
経費精算書には
- 部署名・氏名・従業員番号
- 申請日
- 支出日
- 支出内容
- 支払先
- 金額
- 備考
が必要。領収書も必須。
領収書がない場合の対応(取引先の結婚式、葬儀の慶弔金、公共交通機関の利用、取引先との食事の割り勘など)は、代わりの利用明細を証憑にする。または出金伝票。
日付、支払先、金額、支払目的、支払内容がわかるようにする。
仮払精算
事前に金銭を従業員に渡して会社の業務に使用し、後日差額を精算する方法。
「仮払経費申請書」などを用いて仮払金を受け取り、業務後、「仮払経費精算書」と実質いくら払ったかを報告する。
仮払い申請は、一定額以上の場合に限定すると良い。
精算書には、立替同様領収書を貼付ける。
### 領収書の管理
- 領収書とレシートの違い
- 領収書等の保存期間
- 電子保存
領収書とレシートの違い
3万円以下ならレシートでも可能。消費税法上、3万円以上は宛名が必要。
宛名の有無が大きな違い。
領収書等の保存期間
年度別、月別にファイリングして保存する(会社による)
7年間の保存義務。
電子保存
2022年1月~、電子帳簿保存法
- 紙でもらった領収書等:電子保存または紙で保存
- 電子取引による領収書等:電子保存のみ
電子保存には要件が求められている
- タイムスタンプ:領収書の保存時刻。領収書受領から2ヶ月と7営業日以内にタイムスタンプ付与
- データの削除・訂正記録が残る場合:タイムスタンプ不要
- 事務処理規定:訂正削除防止に関する事務処理規定の備付け
これらに加えて、検索機能の確保が必要
日次業務 - 請求書と領収書の作成、伝票入力
請求書の作成
請求書:取引先に代金の支払いを請求するための書類
請求書必要記載事項
- 請求書の発行先
- 自社情報(あれば尚可:社印)
- 請求内容
- 請求金額(税抜・税込)
- 請求書の発行日付
- 支払期日
- 不r込み先
- 振込手数料の負担(どっちがわが支払うか)
- 請求番号
請求書の発行タイミング(請求書の種類)
- 継続取引:商品の発送・サービス提供を継続的に行う取引。毎月支払いう。取引先、締め日、支払日を確認。
- 単発取引:商品の発送・サービス提供が短髪で終わる取引。都度請求なら業務完了後。締め請求なら締め日に請求。
- 請負契約:契約の際に使用を決めてそれ通りに商品の納品やサービス提供を行う取引。契約で決められた時期に請求。
領収書の作成
市販の領収書、エクセルで作成したもの、を相手方に渡す
5万円以上の場合、印紙税がかかるため、金額に応じた収入印紙を貼付する。
領収書作成ポイント
現金:領収書発行義務有り
銀行振込:領収書発行義務有り。領収書の代わりに「振込明細」で代用されることが多い。
クレジットカード:領収書発行義務無し。印紙は不要。領収書代わりに、利用明細書を使用する。
伝票入力
伝票起票→総勘定元帳に転記→試算表に集計、B/S・P/Lに集約
自社は税込みか税抜か
税込処理のメリット:伝票入力を税込金額で入れるだけで良いので楽。決算時にまとめて処理する。また、簡易課税制度に適している。
税込処理のデメリット:決算が確定して、租税公課(費用)が計上されるので利益が読みにくく、業績管理に適さない。
税抜処理のメリット:消費税を、売上と経理から分けて計算できるため、業績管理に適している。また、納付額が把握しやすい。
税抜処理のデメリット:決算まで、毎回仮払、仮受消費税を計上するため伝票入力が煩雑。
税抜なら外税、税込なら内税。
摘要の全角、半角は統一すると良い。
日次業務 - 労務管理(勤怠管理・有給休暇管理)
人事・労務管理:従業員がその能力を会社で最大限発揮できるように環境整備・統制・運用していく
人事管理:求人・採用、異動・退職、育成・評価、労務管理と業務がある。
労務管理:労働環境整備、勤怠管理
労働環境整備
- 就労規則の整備
- 法定労働時間・休日の理解
- 36協定の締結
就労規則の整備
従業員の労働条件や待遇など会社のルールを定めたもの。厚労省HPにモデル就業規則がある。
就業規則の作成義務は、常時10人以上の従業員がいる事業場。パート・アルバイトも含む。
意見書の作成の必要。
意見書:従業員の代表が就業規則に対する書類。代表者は従業員の過半数が代表と認めた者。
就業規則と意見書を作成したら労基署へ提出し、労働者への周知まで行う。
法定労働時間・休日の理解
法定労働時間:1日8時間以下、1週間40時間以下
法定休日:1週間1日以上もしくは4週間に4日以上
休憩時間:労働時間が6時間超なら45分以上の休憩。労働時間が8時間超なら1時間以上休憩。
これらの基本の例外(残業など)が36協定。
36協定の締結
36協定:労基法の第36条に規定している。
法定労働時間以上や法定休日に労働をさせる場合、事前に従業員の代表と36協定を締結する必要がある。
36協定を提出したとしても、法定時間外労働は月45時間、年360日まで。
といいつつも36協定にも例外(特別条項)があり、36協定以上の労働をさせる場合は、特別条項付きの36協定を提出する必要がある。そのうえで
- 年6回までなら月45時間超可
- 時間外労働:年720時間以内
- 法定休日 + 時間外労働:月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内
が可能になる。
割増賃金
法定時間外労働:25%増の割増賃金
法定休日労働:35%増の割増賃金
深夜労働(22時~):25%増の割増賃金
勤怠管理
従業員の健康と安全に配慮し、36協定の遵守及び適切な賃金の支払のため、従業員労働時間を適切に管理する
勤怠管理:従業員の健康と安全、36協定の遵守、適切な賃金の支払
勤怠管理方法
- オフィスビルの入退館記録
- パソコンのログイン時間
- タイムカード記録
- 勤怠管理システム
賃金台帳の作成:労基法第108条 使用者は適切な賃金台帳を調整しなければならない
目的:従業員の給与の支払状況の管理
保存期間:原則5年
必要記載事項:指名、正滅、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数、休日労働時間数、基本給・手当などの種類別の金額、控除項目と金額
有給休暇管理
一定の条件を満たす場合には法律で定める年次有給休暇を付与する必要がある。
- 継続勤務要件:雇用から6ヶ月継続して勤務していること
- 出勤率:継続勤務要件の期間の全労働日の80%以上出勤していること。
10日以上の有給休暇を付与し、年に5回以上取得させる必要がある。
1年毎に1日ずつ付与し、3年目以降は2日ずつ付与日数が増え、最大20日付与される。